<連載読み物>
小田原 青色申告会 発行 青色NEWS WEB
青色NEWS WEB

2011年4月号〜2011年9月号
売れない昭和の経営手法、売れる平成の経営手法

 お客が減るのは何故?






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「お客が減って減ってしようがないよ。どうしたら良いんだろうか?」
青「職種は何ですか?」
経「何処にもある靴屋だよ」
青「繁盛した頃から比べるとどの位減ったのですか?」
経「半分のまた半分以下」
青「商店街ですか?」
経「昔はね。今は住宅地って言った方が当たってる」
青「お客様が減ったのは色んな理由からです。原因はひとつじゃないんです」
経「複数あるって事?」
経「まず、景気が下がった事。これだけなら景気が復活すれば戻ります」
経「景気だけじゃ無いの?」
青「宣伝していますか?」
経「宣伝?そんなもんしてないよ。だって何処にそんな余り金があるんだよ」
青「アナタの靴屋さん、知られていますか?」
経「昔はみんな知ってたよ。この辺でウチを知らない人は潜りだよ」
青「昔はそうでも今は?」
経「今は昔ほどじゃないな」
青「昔ほどどころかもっと知られてないですよ。昔から地味に経営している事業は経営者が思う程知られて居ないんです。お客様が来ない第二の理由です」
経「知られてない事か・・・」
青「お店の外観はキレイですか?」
経「外観?何時も中にいるから外観って意識した事が無かったな」
青「新規客は汚いお店にはまず入りません。古くなりすぎたり壊れたりしていて手入れをしていないと言う印象を与えると余計利用しません。これが第三の理由」
経「良いもの売っていれば良いんじゃないの」
青「良いもの売っているって、お店を利用した事のないお客さんが、何処で知るんですか?」
経「うっ…」
青「若い世代に知られていない。宣伝もしない。店の良さを誰にも訴えない。それで新しい客が来ますか?」
経「うーん」
青「初心ですよ。商売迷ったら初心に返る」
経「初心?」
青「アナタが今の事業を始める時、お客様は既に居たのですか」
経「最初は居なかったよ」
青「お店の外側は?」
経「そりゃ新品だものキレイだったよ。毎日キレイに磨いていたしね」
青「宣伝しませんでした?」
経「したよ。ちんどん屋を雇ってね。金かかったけどお客さんは来たね」
青「その頃の新規客は今は何歳になってますか」
経「創業50年だからね。もういい歳のお爺さんお婆さんだよ」
青「と言う事は50年二世代もの間が空いてるんですね」
経「二世代?」
青「一生懸命売上を上げようと頑張った創業期。でも、景気の良さにあぐらを掻いて油断して二世代が過ぎた」
経「そうか?そんな長いこと宣伝してなかったのか」
青「お得意様は居ても、そのお子様・お孫様には知られていないですね」
経「利用されないんじゃなくて利用されるような準備をしていなかったのか」
青「そうです。確かにこの20年という長い景気の低迷で、お客様の購買量が減りそれが売上に大きく響いています。でもそれは一つの理由であって、それ以外に大きな問題があったんですね。お店が知られていない事。宣伝をしなかったり、新しい世代のお客様が望む商品の研究をしなかった事。そう言う知って貰う努力を怠っていた事。そして、お店の良さ・長所を店の中に仕舞い込んでしまい、外側を無視した事。外観は新規客を入れる為の大きな基準。何時もお店の中にいる経営者には見えない場所。でもお客様は外から来るんです」
経「お客様は外から…ね」
青「今までは経営者目線で経営してたけど、これからはお客様目線が必要です」
経「それもこれも初心に帰れってやつだね」

●2011年4月号掲載


 安売りって、どうよ?






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「なんか最近売上が上がらないよ。俺っちも安売りでもはじめようかな?」
青「ちょっと待って?何で安売りにするんですか?」
経「何故って?安くすれば売れるからだよ」
青「どんなお店がやっているのですか」
経「ひもの屋だって電気屋だってみんなそうだよ」
青「売れているのは安いからじゃないんですよ」
経「え?じゃ何故?」
青「安いのも一つの魅力ですが、何より凄い売る努力をしているからですよ」
経「努力?って何よ?」
青「電気の量販店は安く売る上に莫大な広告宣伝費をかけてお客様を呼んでます」
経「チラシやCMの事か」
青「店作りや誘導看板も立派なものを作ってますよ」
経「そうだな」
青「安いだけじゃお客様が来ないからですよ」
経「宣伝を伴え、か」
青「それだけじゃない。安売りはとても危険な作戦なんです」
経「危険?」
青「利益が狭まりますから人件費や経費の削減が必要です」
経「そう……だな」
青「それに、さっき言った広告費なんかの必要経費も捻出するために、利益は益々狭まります」
経「でも俺っち家族が食えれば良いからなぁ」
青「安売りのもう一つの落とし穴は、更に安い店が表れると、お客様が皆そっちへ行っちゃう事です。安売りで来店するお客様はお得意様には成らないのですよ」
経「おいおい、脅かすなよ」
青「安売りはきりがありません。そういうお客様はお店への愛着よりも安い商品を探して満足するんです。近所の店より10円安いタマゴを買いにガソリン代百円使って隣町に行くんです。節約と言うより趣味ですよ」
経「なんか納得できるな」
青「それともう一つ」
経「まだあるのかい?」
青「事業が利幅を狭めると利益が減って人を雇えません。安直な安売りを行うと失業率が上がるんです。そうすると景気が更に悪くなってモノが更に売れなくなる。悪循環ですよ」
経「えーっこれ以上売れなくなるの?」
青「そもそも安売りは薄っぺらい事業戦略です。その時代時代に代表する安売り事業がありますが、皆長続きしません」
経「そう言えばそうかも」
青「安売りって凄くお金のかかる事業です。小規模事業じゃ真似出来ません」
経「じゃどうしたらいい?」
青「面倒な事をする事です」
経「面倒な事?」
青「価格だけ下げればって安直な事を考えずに、お客様が沢山喜ぶ難しい事、面倒な事をするんです。安さより『価値』を売るんです」
経「価値?まぁ俺っちは専門職だからね。お客様を喜ばす価値か・・・」
青「で、その価値をちゃんとお客様に知らせるんです」
経「良いモンがあってもお客さんが知らなきゃ売れないものな」
青「そうですよ価値を造って、お客様に喜んで貰って、胸張っていっぱしの利益を貰いましょう」
経「胸張ってってか?」

●2011年6月号掲載


 価値って、何よ?






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「なんか最近、付加価値だの事業価値だの聞くんだけど、それって一体なんのこったい?」
青「早い話、付加価値は利益率・粗利益の巾です。で、事業価値はブランドや暖簾の強さですね」
経「ふん、そうか。でもそれをどうしろって言うんだろうね」
青「例えば1億円売る事業が二つあったとします」
経「おお、大きく出たね」
青「利益率は業種によってマチマチですが、A店が25%とします。そうすると粗利益は二千五百万円です」
経「さずが計算が速いね」
青「同じ業種のB店が40%の利益率だったら、四千万円の粗利益が出ますからA店よりもはるかに利益を出しやすい事業構造です。これを事業価値と言います」
青「ほうほう、事業価値ね。同じ売上で粗利が千五百万円違うと大きい差だね。でも、それってどうすれば良くなるんだい?」
青「それが経営努力ですよ」
経「また努力かよ」
青「利益を上げるには仕入れを安くするってのが今までのセオリーですが、現在ではそれも限界です」
経「だよな。もうこれ以上仕入れは下げられないよ」
青「でも、仕入れを下げずに粗利を増やす方法があるんですよ」
経「そんなのあるのか?」
青「つまり、値上げをするんです」
経「がくっ。この不景気の時代に、そんなの無理に決まってるよ」
青「無理じゃありません。実際この小田原周辺でも数件の事業者が付加価値を上げて事業価値を向上させています」
経「青色会員でか?」
青「そうです当会の会員さんです」
経「じっさいどうしたの?」
青「長い間の不景気で多くの事業所では商品やサービスが改善されて良いモノを持っています」
経「宝の持ち腐れってか?」
青「商品は良いけど、売り方が悪いんです」
経「売り方って?そんなもあるのか?」
青「事業の印象、商品の印象で価格が上下するんです」
経「えー、本当か?」
青「同じ干物でも店のブランドによって価格が違いますよね」
経「大店はそうだね」
青「そもそもブランドは大店だけのものじゃないです。どんなに歴史のある店でも開業当初はブランドなんか無かったんです」
経「そりゃそうだ」
青「じゃ、今ブランドが無いと将来も無いと決めつけるんですか?」
経「そう言う訳じゃないが」
青「ブランドが無い理由は簡単です。お店が古かったりペンキがはげていたり、毎日そこにいる内部スタッフには気がつかない部分での老朽化やイメージの悪さがブランドと反対の作用をもたらしているんです」
経「じゃ何か?俺っちのような小さな店もブランドが持てるってのか?」
青「勿論です。マニュアルや規格化でがんじがらめの大企業の店舗より個性的で差別化が出来て楽しくて小回りが効いて、前向きに考えれば、小規模事業は良い要素ばかりじゃないですか」
経「おっと、脅しといて褒めるか?飴と鞭だな」
青「小規模だから改造するのもそんなにかからないんです。問題は前向きに努力するか、しないか?です」
経「また努力かい?」
青「努力が基本っすね」

●2011年7月号掲載


 そもそも昭和と平成の商売の違いって?






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「色々教えて貰っていて何なんだけど、そもそも平成と昭和って、何がそんなに違うんだい?」
青「沢山の違いがあります」
経「沢山かい?まぁ順番に教えてくれよ」
青「昭和20年、終戦を迎えて日本はどんなでした?」
経「太平洋戦争か、おいらもまだ小さかったから余り覚えてないけど、小田原も相当焼け野原になってたよ」
青「その荒野で皆さんが事業を興したんですよね」
経「俺の親父もそうだけど、うん、当時はみんな生きるのさえ大変だったよ」
青「周辺は焼け野原。そこに町が出来て商店街が出来て、小田原周辺は大きな商業地域になったんですよね」
経「みんな必死に働いてね。夜も昼もなく、子供や家族のためにそりゃ一生懸命だったよ」
青「戦後の復興、経済は大きく成長しました。それを復興需要と呼びます。そしてオリンピック需要、高度成長需要へと繋がりました」
経「今の様な終わりの見えない不景気は無かったなぁ」
青「経済というものは本来なら好景気と不景気を繰り返して三歩進んで二歩下がる的に徐々に拡大するものですが、日本の場合は戦後からバブルまでの約50年間にも渡る異常とも言うべき景気拡大をしてきました」
経「異常?昭和の時代が?」
青「そうです。昭和の時代が普通だと思うから、今を受け容れられず、いつまでも事業が上向かない経営者が沢山いるんです」
経「ギクっ。俺もそうかも」
青「長い長い50年という異常な好景気の後に待っていたのは、長い長い不景気たっだのです」
経「ってことは、この不景気はまだ続くのか?」
青「いえいえ、そろそろ終息に向かっています。日本の景気は20年ぶりに大きく上向く兆しを見せています」
経「地震があったのに?」
青「本当は3月の地震の前から景気の上向きは予測されていたのですが、地震で半年から1年くらい先送りしたようですね」
経「じゃ、昔のように商売しやすい時代が戻るんだな」
青「待って下さい。言ったでしょ?昭和の時代は異常だったって。景気が戻っても、昭和の手法は役に立ちません」
経「なんで?」
青「昭和の時代には圧倒的に強烈な需要がありました。今の中国もそうですが、誰もが経営者になりやすい環境です」
経「中国も好景気だからな」
青「日本は既に世界最高水準まで成長しきっています。これから伸びても以前ほどの成長率はありません。故に昭和の時代のような強烈な需要はありません」
経「その強烈な需要が昭和の時代の何に役立っていたんだい?」
青「強烈な需要は商売のしやすさを導いてくれます」
経「商売のしやすさ?」
青「昭和の時代を現在ではプロダクトアウト(生産)の時代と言います。つまり、作れば売れる構図です」
経「そう言えばそうだな」
青「対して現代はマーケットインと言い、顧客の嗜好や選択が細分化して、顧客の要望に叶わない商品はまったく売れなくなりました」
経「解る気がする」
青「大げさに言えば、どうやっても売れた時代が昭和であって、その時の成功経験から抜け出せない経営者が今苦しんでいるんです」
経「どんな事?」
青「例えばデザイン。昭和の時代の事業デザインはほぼ9割経営者が決めていました」
経「そりゃそうだろ。自分の商売のデザインぐらいは自分で決めても良いだろう」
青「実はそれが大きな間違いなんです。経営者は事業の専門分野のプロです。が、デザインのプロではありません。だから、昭和の時代のデザインは事業成績に殆どが何の役にも立っていませんでした」
経「おいおい、言い過ぎじゃないのか?」
青「自分が嫌いなセンスの店に入りますか?」
経「入る訳無いね」
青「じゃ、アナタのお店のデザインは、お客様の好みのデザインですか?」
経「・・・・・・んん」
青「アナタの事業のお客様の嗜好や性格を知っていますか?そしてそのお客様を真ん中においた事業デザインを構築していますか?」
経「ターゲット顧客か・・・。実際に想定して無かったな」
青「大企業やフランチャイズが意とも簡単にお客様を掴むのは、そう言う研究や調査を経て、お客様好みのスタイルやデザインを敢えて使っているからですよ」
経「でも、これは経営者の主張だからな」
経「専門分野でも無いデザインの分野で、経営者の主張をする事がそれほど大切な事でしょうか?それよりも、他に抜きんでるアナタのサービスや技を、より多くのお客様に利用して貰う事の方が大切な事なのでは無いでしょうか?」
経「そうだな。自分よりお客様って忘れてたよ。これが平成の商売なんだな」

●2011年8月号掲載


 そもそも昭和と平成の商売の違いって? その2






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「平成の事業が顧客主義で経営しなけりゃならないってのは良くわかったよ。じゃ、どうすりゃいいの?」
青「商品やサービスには自信がありますか?」
経「そりゃあるさ。誰にも負けないよ」
青「じゃ、お客様はそんな素晴らしい商品がある事をご存じでしょうか?」
経「知らないだろうな。知られてたらもっと売れているよな」
青「それは宝の持ち腐れですね。良い商品はしっかりと知られないと」
経「どうすりゃいいのかね」
青「昭和の時代は需要が強く、お客様側が事業を探してくれましたが、平成の今は逆で、事業側が積極的にお客様へアピールしなければなりません」
経「PRだよな。何となく必要だって感じるけど、何をすりゃいいのかね」
青「まずはお店の外観です。色あせた看板や壊れた箇所の修繕、長年の汚れや要らないものの廃棄ですね」
経「外観?外観ってそんなに大事なのか」
青「今のお店に大切なのは圧倒的に減った常連客を増やす事です。新しい常連客とは、新規客です。新規客は汚いお店には入りません」
経「ん。そういや新規客が入る事なんて考えた事もなかった。けど、言われるように、新規客を掴まなきゃ常連は減る一方だもんな」
青「そうなんです。売上が減った一番の原因がそこなんです。新規客対策です」
経「対策か、警察じゃあるまいし大げさだな」
青「商売は最低限商売が維持できるくらいの利益が無ければなりません。大げさですが真剣なんです」
経「そうだな。俺の親も創業の頃は格好悪いほど真剣だったもんな。俺にはそれが格好良くうつったけどね」
青「そうです。お店を磨く事。キレイにする事。常に魅力的に見せる事。当たり前の事ですが、手を抜いているようですね」
経「他人の店は何とでも言うけど自分の店はそう言う目で見なかったよな」
青「外観をキレイにする事の次は、何のお店かを明確に外へ訴える事です」
経「外へ?どうやって?」
青「まず何屋さんか?が一目でわかる事。そしてどんな商品やサービスがあるか、それが幾らで提供されるか、そう言う最低限の情報を外から見えるようにします」
経「新規客は店の中や商売の内容を知らないから、そうする必要があるんだな」
青「まだあります。地域の新聞や情報紙にお店の宣伝を掲載する事やインターネット上で情報を提供する事も大切です」
経「ホームページだな」
青「そうです。お店の事業内容に自信があるなら、それをしっかりと外側に紹介しなければなりません」
経「広告の必要性か?」
青「ホームページや携帯電話の普及で、お客様に届く情報量が昭和に比べて5百倍以上もあります」
経「5百倍?!」
青「じっとしていたらお店は知られもしないんです」
経「だから、客がぐっと減ったんだな」
青「そうです」
経「何もしなければ、お店が知られない。つまり、利用されないって事だな」
青「そうです」
経「商品が古いから売れない訳じゃないんだな」
青「20年前の商品はむしろ若者には新しいです」
経「俺たちも努力すれば復活できるんだな」
青「その通りです」
経「よーし。その言葉信じるぞ。じゃ、何か?その平成の手法って奴をじっくりと聞こうじゃねぇか」
青「ありがとうございます」
経「昔のように良い時代が築けるんだな」
青「じゃんじゃん儲けて、しっかり納税してください」
経「おいおい、さすが申告会。言う事たぁ違うねぇ」

●2011年9月号掲載
 

小田原青色申告会
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